報 告

 第15回大分緩和ケアの夕べ

日   時  : 平成20年1月16日(水)
場   所  : アステム 4階 大会議室
参加人数 : 152名 
         医師19名、看護師113名、薬剤師7名、その他13名 

 今回の第15回の緩和の夕べは、オーストラリアにて緩和ケアを行っている下稲葉かおりさんに、わざわざ、赤道を越えて大分まで来ていただいた。
講義は、ケアを提供する医療者自身の喪失・悲嘆ということ問題について、まず私達医療者の経験、喪失、悲嘆、そしてサポートやセルフケアについて、どうように対処するかなど、具体的に講義していただき、多大の感銘深い講義であった。(文責:山岡憲夫)。


 【 講演内容 】


『私たち医療者の悲嘆とサポート』

演者: 下稲葉 かおり氏(モナシュ大学〔オーストラリア〕看護学科 講師)



 【 講演要旨 】

T)グリーフ、悲嘆の定義
      対象喪失による全人的な行動プロセス
 @ 原因
    愛する人の死、離婚、ペットの死、病気、引っ越し、転校、失恋
 A 悲嘆について
   1) すべての悲嘆の経験はユニークである。指紋のようである。
   2) すべての生活に影響を与える、健康を害する
   3) 死によって命は終わるが、その関係は終わらない
   4) 悲嘆は取れ去ってしまうのでなく、それと共に生きることを学ぶ
 B 喪失と悲嘆:その理解
   悲嘆のプロセスの2次元モデル
   悲嘆に関連した因子と、回復に関連した因子の2つがいつも行きつ戻っている。
 C あなたの喪失:悲嘆経験
   質問:あなたの喪失関係は?
       それはどのようにして癒されましたか?
   カウンセリング

U)ストレス、バーンアウトについて
  a)外的要因:厳しい勤務体制、チームワーク不足、、経験不足、患者や家族との関係など
  b)内的要因:個人の性格、患者のQOLに対する責任からくる重荷、
    患者の死によって考える自己、ナースの中に眠っていた悲嘆

V)コンパッション
   苦しみにあるひとに対する深い共感、悲しみに伴う感情や行動。・
   悲しみを分け合う。
   悲しみを共にする事
   コンパッション疲労:厳しい経験をしている人を援助することによって起こるストレス

W)サポートについて
  質問:あなたは今、サポートが必要ですか、あなたはサポートしてらう人を持っている
     どのようなサポートがほしいですか
  @ 組織レベルのサポート: 外部から
  A 病棟レベルのサポート: 師長など
         同僚間のサポート
         スパービジョン、教育
  B 個人レベルのサポート:自分をサポートする
         セルフケア
         自己にも全人的ケアが必要である。

* 自己認知: 自分を知る、自分にニーズを知る、自分の痛みを知る。
“私達はケアをしなかったから、バーンアウトするのでなく、
悲しまなかったから、バーンアウトするのです。
私たちをケアする余地がないほど、自分の心を悲しみで一杯になることを許しているので、バーンアウトするのです“

すばらしい講義であった。以上でした(文責:山岡憲夫)